人民元切り上げの日本への影響

当ページでは、人民元切り上げの影響を検証しています。前回に、人民元切り上げが中国国内に与える影響として、輸出が減少する事や、不動産バブルを助長する事などを説明しました。

では今度は、人民元切り上げが日本経済に与える影響について、検証してみます。

まず、日本への中国人観光客が増えるという影響が出ます。元の為替レートが高くなれば、中国人が海外で買い物をする際には、同額でより多くの物・サービスが買える事になり、海外旅行が増える事は確実です。現在、中国人観光客が日本で買い物する金額は、平均で約14万円というデータがあります。人民元が切り上げられると、この金額が増える可能性が高く、しかも観光客の数自体も増えるのです。日本経済へのプラス効果は、相当大きいでしょう。

また、日本から中国への輸出も増えます。実は、中国が最も多くの製品を輸入している相手国は、日本なのです。中国では反日感情が盛んだと報じられていますが、それは日本のメディアが極一部の状況を伝えているに過ぎません。多くの中国人が、性能の良い日本製の自動車や家電製品を好んでいます。価格の高さがネックになって、売上は中国製や韓国製品などに後れを取っていますが、人民元高によって日本製品の値段が相対的に安くなれば、状況が一転する事もありえます。

よって日本国内では、観光や飲食などのサービス業や、自動車・家電などの輸出産業にとっては、人民元の切り上げは大きなプラスの影響が及びます。

逆に、日本への悪影響としては、中国産の食料品や、中国製品の価格が高騰することです。人件費の安い中国で作られていた商品が、人民元が切り上げられる事によって、製造コストが跳ね上がるのです。

典型的なのが100円ショップの商品です。元々単価の安い100円ショップでは、僅かでも製造コストが上がっただけで、商売が成り立たないのです。また、トップバリューなどに代表されるプライベートブランドの食料品には、中国産の原材料が数多く使われています。当然、これらの原価も人民元高によって押し上げられますので、スーパーで安く買えるプライベートブランド商品が、値上がりする可能性が高くなります。

つまり短期的には、日本国内の物価が上昇する事で、マイナスの影響も小さくありません。特に、値上がりが大きいのが100円ショップやプライベートブランド商品なので、低所得の人達ほど悪影響が大きくなります。

しかし、中国産の製品・食料品が、国産に切り替わる事が促進されるので、日本国内の生産および雇用が増えることになります。また、日本経済は輸出産業の割合が強いので、彼らの収益力が上がる事で、国内の他の産業へもプラスの波及効果が見込めます。

よって長期的に見れば、日本にとって人民元切り上げは、間違いなくプラスに影響します。このことは、1994年に人民元が切り下げられた後、日本経済が大きく後退したという歴史が、逆説的に証明しています。