人民元建て債券のメリットと問題点

人民元への投資手段の一つに、人民元建てで発行されている債券に投資する方法も考えられます。債券は元本保証・利息も確定しており、株式投資に比べれば遙かに低リスクな事がメリットです。それでいて、購入時よりも償還(売却)時に、元高円安が進んでいれば、為替差益が得られますから、ローリスクでローリターンでもなく「ミドルリターン」位は見込めるかも知れません。これら人民元建て債券のメリットと問題点について、解説していきます。

まず人民元建て債券には、大きく分けて二つの種類があります。一つは中国政府の発行する「国債」で、これは基本的に外国人は購入できません。但し、電子式貯蓄国債というオンライン版の国債なら、中国本土の銀行に口座を開設すれば、外国人も購入可能なようです。また2013年7月上旬現在、楽天証券でも中国国債(表面利息=年1.4%)の既発債を販売しています(※注)。

もう一つの種類としては、国債ではなく社債です。そして社債の中にも、大きく分けて二種類のパターンがあり、中国国内の企業(中国銀行など)が発行する社債。もう一つはスイスのUBSやドイツ銀行など中国以外の企業も人民元建ての社債を発行して、個人投資家から資金を集めることがあります。これは、UBSやドイツ銀行が『QFII(適格外国機関投資家)』の枠を持っていることが可能にしている手法です。

但し個人投資家から見た場合、QFII枠を使った中国以外の企業の人民元建て社債は、投資対象として問題点も意識すべきです。確かにUBSやドイツ銀行が倒産する確率は極めて低いですが、それでもデフォルトリスクはゼロではありません。そもそも何故、UBSやドイツ銀行が「わざわざ」自国通貨ではなく、人民元建てで社債を発行しているのでしょうか?それを考えると、利息に余り見合わない債券だと言わざるを得ないでしょう。

中国国債にせよ、人民元建ての社債にせよ、利息は日本の国債や社債よりも高めです。しかし、最大のメリットはやはり、人民元切り上げによる為替差益でしょう。しかし、他のページでも述べたように、人民元は必ずしも切り上がるとは限らず、短期的には円高が進むリスクは十分考えられます。人民元の動向(=中国政府の意向)次第では、人民元建て債券のメリットは、一転して巨大な問題点に変わってしまうリスクを孕んでいるのです。

※注;外国人が中国国内で発行される人民元建ての債券には、投資できません。しかし、香港で発行される「間接的な」人民元建て債券なら投資できます。日本のネット証券で購入できる人民元債券も、大半が香港で発行されたものです。