香港株投資でも人民元切り上げの恩恵は受ける

当サイトで紹介したように、人民元と香港ドルは完全に別の通貨です。そして、人民元建ての上海株式市場への投資は、外国人(我々日本人も)は基本的に不可能で、一部のETF(上証50ETF【1309】パンダ【1322】)などを通じて行うしか、方法はありません。

日本の証券会社でいう「中国株」とは、香港株式市場のものです。そして、香港株の売買に使われる通貨は、1983年以来、為替レートが米ドルと固定されたままの「香港ドル」です。ということは、日本の証券会社で香港の株式に投資すると、人民元切り上げの恩恵は受けられないのでしょうか?


確かに香港ドルを日本円に戻す際の、直接的な為替差益というのは見込み薄といえます。しかし実質的には、香港株に投資しても、人民元切り上げによるプラスの影響は受けられます。

その理由は、香港株といっても上場している企業のほとんどが、中国本土でビジネスを行っているからです。これらの企業が中国本土で上げた利益は、当然ながら「人民元」建てになります。そして、決算書を作る際に、その利益が「香港ドル」に為替換算されます。この時に、人民元が切り上がっていれば、香港ドルベースの利益には「為替差益」がプラスされることになります。

そして、株式投資は長期的に見れば、企業のEPS(一株利益)の増益率に比例して、株価は上昇していきます。香港上場企業のEPSは、人民元の切り上げによって(香港ドルベースで)大きく増えますから、理論的には株価もそれに従って大きく増えていくはずです。

分かりやすいように図で表すと・・・

  • 上海ETF=企業利益 ⇒ 株価決定 ⇒ 日本円に換算(ここで為替差益)
  • 香港株式=企業利益 ⇒ 香港ドルに換算(ここで為替差益) ⇒ 株価決定 ⇒ 日本円に換算

このように、人民元切り上げによる為替差益が発生するポイントが異なるだけで、香港株でも最終的には、切り上げによるプラスの影響は受けられるのです。ですから、人民元切り上げの恩恵に預かる方法として、香港株への投資も、一つの有効な手段だと言えるのです。

但し注意点としては、香港株企業の収益力を通じた恩恵ですから、人民元の為替レートだけでなく、各々の企業の株価変動リスクに晒されます。従って、人民元預金などに比べて、ハイリスクハイリターンな投資方法だと心得ておくべきです。