人民元預金のメリットと問題点

当サイトでは、将来的に人民元が切り上がっていく確率が、極めて高いと述べました。ということは、人民元で預金しておけば、リスク無しで多大な利益が得られる!と考える人も居るでしょう。その上、人民元は金利も日本円に比べて高いのですから、かなり有効な方法に思われる方も多いはずです。

日本ではまず、中国銀行が人民元預金を始めましたが、2011年10月からはネット専業の「じぶん銀行」も人民元預金を取り扱い始めました。今では取り扱い銀行も拡大し、手軽に始められる外貨預金として注目が高まっています。ですが人民元預金は、必ずしも有効であるとは言えない状況です。


まず人民元は、確かに徐々に切り上がってきている(元高になってきている)ものの、そのペースが緩すぎるという批判が欧米各国から相次いでいる状況です。そのため、短期的には急激な元高による為替差益は、望み薄だといえます。

そして、人民元に限りませんが、外貨預金というのは為替レートの動きに左右されます。つまり、急激な円高になってしまった場合には、あっという間に大きな為替差損を被るのです。中国は名目上は通貨バスケット制ですが、事実上は米ドルとペッグしているも同然なので、急激な円高ドル安が起きれば、同時に円高人民元安も進んでしまうのです。

また、中国は10年ぶりに習近平氏に国家主席が交代したこともあり、新政府が今後どのような金融政策を行っていくのかは不透明です。ある日突然、再び元安方向へ舵を切る確率も、ゼロではありません。特に習近平氏になった2012年以降、中国の経済成長が大きく鈍化しており、株価も下落傾向にあります。この経済及び株価の対策として、1994年のように突然人民元を切り下げる可能性も、無いとは言えないのです。

更には、人民元は外国人の持ち込み・持ち出しは2万元までと制限されていたり、日本で取り扱う場合は手数料がかなり割高だったりと、他にも問題点はいくつもあります。特に2013年現在、日本の金融機関で取り扱われている人民元預金は、極めて手数料が高く「ぼったくり」と言っても過言では無い有様です。

とはいえ、これはあくまで現時点での話です。長期的には、人民元が米ドルや日本円に対して切り上がっていく事はまず間違いありません。10年20年先を見越して、人民元を長期保有するのは、投資手法としては十分ありえるでしょう。少し待っていれば、何処かの金融機関で、今よりも低コストな人民元預金が誕生するはずです。