人民元と香港ドルは別の通貨

中国本土で使われている通貨は人民元ですが、特別行政区である香港では「香港ドル」という別の通貨が流通しています。この両者は全く別物で、人民元は中国人民銀行が、香港ドルは香港金融管理局が管理する通貨です。


そのため基本的に、中国本土で香港ドルは使えませんし、逆に香港で人民元を使うこともできません。一応は同一の国でありながら、別々の通貨が用いられているという現状は、何とも奇妙なものです。一時期、二つの通貨が統一されるという話も持ち上がっていましたが、2013年現在も統一には至っていません。

また、人民元も香港ドルも、共に米ドルと事実上のペッグ(固定相場)しています。しかし人民元が徐々に切り上げられているのとは対照的に、香港ドルは1983年に1米ドル=7.8香港ドルの為替レートが決められて以来、ずっと固定されたままです。
※厳密には2005年5月より、上下0.05ドルの変動を容認している。

香港は長らく(約150年間)イギリスの植民地でしたが、1997年7月1日に中国に返還されました。香港の正式名称は、中華人民共和国香港特別行政区。中国と香港は、一国二制度(社会主義の中国が資本主義である香港に干渉しない)という体制が(一応)とられています。ですから、香港は中国領でありながら、政治、文化、思想などの面で中国と大きく異なっています。また、事実上の国境が設けられている(中国人が香港へ行く時には、港澳通行証という観光ビザのようなものが必要)ことからも、両国は別々の存在であるとすら言えるでしょう。

ちなみに、香港と似た境遇にマカオがあります。マカオはかつてポルトガルの植民地となっていましたが、1999年12月20日に中国に返還されています。このマカオも香港と同様に特別行政区扱い(中華人民共和国マカオ特別行政区)となっています。マカオの法定通貨はマカオ・パタカですが、実際に多く流通しているのは香港ドルです。しかし、マカオ・パタカは香港では使えません。

香港もマカオも、台湾ほどではないにせよ、完全に中国とは別の国だと認識しても、あながち間違いでは無いのです。